なぜインフルエンザは冬に大流行し、夏には跡形もなく消えてしまうのか。この謎は数十年にわたって伝染病学者らを悩ませてきた。
だが、この問題にもついに答えが出されるときが来たようだ。最新の研究によると、インフルエンザウイルスは絶対湿度が低いときに存続しやすく、したがって人から人へも感染しやすいことが明らかになったという。つまり、外気が冷えて乾燥していると感染が起こりやすいことが確認されたのだ。
 絶対湿度とは、一定量の大気に含まれる水蒸気の総量のことをいう。一方、湿度には相対湿度という尺度もあり、パーセンテージで表現されるこちらは気温に応じて変化する飽和水蒸気圧と大気中の水蒸気の圧力の比率を表している。
「インフルエンザと湿度に関する研究はこれまでにも行われてきたが、いずれの研究でも相対湿度の方に焦点が当てられ、何の関連も見出されていなかった」と、研究を率いたオレゴン州立大学のジェフリー・シャーマン氏は話す。
 この研究は、2月10日発行の「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌に掲載される。
 同氏の研究チームは、過去の研究でもデータは取られたものの見過ごされていた絶対湿度に注目し、再検討を行った。その結果、絶対湿度とインフルエンザには非常に有意な因果関係があることが判明した。「絶対湿度条件に基づいて考えると、ほとんどの変化に説明がつく」と同氏は語る。
 インフルエンザウイルスが絶対湿度の低い環境を好む理由ははっきりしないとしつつも、同研究チームでは、最も感染の広まりやすい病院や診療所などで絶対湿度を上げることを推奨している。
 ハーバード大学の伝染病学者マーク・リプシッチ氏は、この研究について次のように述べている。「インフルエンザの感染拡大に関わる一種のメカニズムの解明において、偉大な一歩を踏み出したといえるだろう。この先の研究では、1年を通じて絶対湿度の高い熱帯地方と温帯地方における拡大スピードの比較が重要なポイントとなる。温帯で季節ごとに起きる流行のサイクルだけでなく、季節を問わず、かなりの被害をもたらしているとみられる熱帯のインフルエンザのサイクルについても説明がつけば申し分ないのだが」。